本記事では契約書に押す割印(わりいん)とは何か、その役割について解説いたします。契印、消印、止印とは何が違うのでしょうか。また、失敗しない押し方についても併せてご紹介いたします。
はじめに、割印の役割について、契印、止印、消印と比較しながら解説いたします。
割印とは、同一の契約書2部以上に対し、すべての契約書にまたがるように印鑑を押す方法です。2通の契約書を離すと印鑑が2つに割れるために割印と呼ばれています。同一の契約書が同時に2部以上発行されたことを証明し、どちらか片方の契約書の改ざんや不正利用を防ぐ役割を持ちます。
図1は、割印が押されたときのイメージです。契約書をずらして重ね、全ての契約書に印影がかかるように押します。
(図1)割印
たとえば同じ契約書を2社で1部ずつ保管する場合や、原本と写しの関連性を示したい場合、基本契約書と覚書の関連性を示したい場合、領収書と控えなどに用いられます。
割印とよく混同されるものの一つが、契印(ちぎりいん・けいいん)という印鑑の押し方です。役割としては割印と似ていますが、押す位置と、対象の書類が異なります。
契印とは、2ページ以上にわたる1つの契約書面の綴目に印鑑を押す方法です。両ページの繋がりが正当なものであり、両方合わせて1通の契約書であることを証明するために用いられます。後から書面を追加されたり、差し替えられたりすることを防止する役割があります。
図2は、契印が押されたときのイメージです。契約書面の綴目に印鑑を押します。
なお契約書が複数枚になり、背表紙が閉じられて冊子になっている場合には、背表紙の帯と契約書本体の境目に押印します。
(図2)契印
あまり馴染みがないかもしれませんが、似たような印鑑の押し方の一つに止印(とめいん)というものもあります。
止印とは、契約書の最後に余白が大きく生じた場合に、文章の末尾に押印する方法です。契約の内容がその位置で終了したことを証明し、契約が勝手に継ぎ足されることを防ぐ役割があります。
図3は、止印が押されたときのイメージです。文章の末尾に両社の印鑑を並べて押します。
(図3)止印
この他、契約書に関連する印鑑の押し方として、消印(けしいん)もご紹介いたします。消印とは、収入印紙と文書にまたがるように、押印または署名(サイン)する方法です。収入印紙が使用済みであることを証明する役割を持ち、収入印紙への消印は必須となっています。
日本では、会社間の取引で作成する契約書の一部に、発行にあたって納税が必要とされる「課税文書」が印紙税法で定められています。収入印紙とは、国に印紙税を納付する手段です。収入印紙を課税文書に貼付し、消印を押すことで、納税が成立したことを証明する仕組みとなっています。
図4は、消印が押されたときのイメージです。収入印紙と文書にまたがるように印鑑を押します。または署名(サイン)でも問題ありません。
(図4)消印
なお、収入印紙を貼る位置については、特別な規定はないものの、契約書の左上のスペースに貼るのが一般的です。
次に、割印に用いるはんこのサイズや形状、刻印内容についてご紹介いたします。
割印に用いるはんこの印面の形状やサイズは、必ず守らなければならない決まりはありませんが、割印専用の印鑑を用意する場合は、縦長の印鑑がよく使われます。縦に長いほうが複数の書類にまたがって押すときに、失敗しにくく、特に3社以上が関連する契約書の押印に適しています。
割印専用の印鑑を作る場合、文字数が少ない法人名の場合は「13.5×33mm」、文字数が多い法人名の場合は、「15×36mm」が選択されます。
割印に刻印する内容にも、特別な規定はありません。しかし、役割を考えると法人名・社名は必要と考えて良いでしょう。
もしくは法人名・社名の末尾に「〇〇〇之割印」「〇〇〇契約書之割印」と入れて作る場合もあります。そうすることで他の種類の印鑑と区別をつけやすくなります。
割印に用いる書体についても規定はありませんが、篆書体(てんしょたい)や古印体(こいんたい)などが用いられることが多いです。視認性を考慮すると古印体のほうが読みやすいですが、契約書のため複雑なほうが選ばれやすい傾向はあるようです。
続いて、割印の押し方や押す位置について、シーン別にもう少し詳しくご紹介いたします。
契約書の原本とその控えに割印を押す場合は、両者の関係性がわかるよう、2つの書類を縦・横に少しずらし、両方の書類にまたがるように印鑑を押します。
2名以上が署名する契約書であれば、代表者だけでなく全員分の印鑑が必要です。多くの場合はA社とB社の代表者それぞれの署名が記されており、A社とB社それぞれの割印を押すことになります。このことからもやはり割印の刻印内容には法人名・社名は必要と考えて良いでしょう。
(図1)割印
領収書とその控えは大抵の場合、2つで1つの用紙になっていて、両者をハサミで切り離せるような構造になっています。領収書とその控えに割印を押す場合は、切り取り線の上に印鑑を押し、両者の関連性・金額の整合性を示します。
なお、領収書の場合は角印や認印が使われる場合も多いです。
3人以上で同じ契約書を保管するときは、署名・押印している全員の印鑑が必要で、かつ3通すべてに割印が押されなければなりません。
丸形の印鑑を用いる場合はおそらく長さが足りないので、原本と1枚目の写しに1箇所、1枚目の写しと2枚目の写しに1箇所、合計2箇所に割印を押します。
縦長の印鑑を用いる場合は、2箇所押さなくても1度に3通押せるかと思います。
せっかく契約書ができあがっても、割印がうまく押せないと製本からやり直しに…・・・なんてことにもなりかねません。最後に割印を失敗しないように押すポイントをご紹介いたします。
契約書が複数ページにわたって厚みがあると、割印が押しにくくなります。このような場合は1ページ目だけを開いて重ね合わせると良いでしょう。紙1枚に割印するのと同じような感覚で押すことができます。
基本的なことではありますが、印鑑マットを活用する方法が有効です。割印を押すのは重要な局面かと思いますので、横着せず印鑑マットを用意することをおすすめします。
契約書への割印の押し方や、割印の役割についてご紹介いたしましたが、「そもそも契約書に押印をする作業時間を確保するのがつらい…」「もっと時間短縮できたらいいのに…」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
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