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電子契約の印鑑(ハンコ)は本当に不要?気になる法的解釈とリスク

公開日: 更新日:

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、企業で取り扱う契約書などの書類や行政手続きについて、押印をなくそうとする動きが加速しつつあります。印鑑を使用しない電子契約サービスへ極力移行させ、業務効率化を図ることがその狙いですが、本当に契約に印鑑(ハンコ)は不要なのでしょうか。クラウド型の電子契約サービス「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」を提供する弊社にも多くの企業から相談が寄せられています。
本記事では電子契約における印鑑の必要性について、法的解釈や心配されるリスクに触れながらご説明いたします。

電子契約の普及状況

電子契約とは、従来は紙書類と印鑑の押印で成立させていた契約書のやり取りについて、電子書類で行う契約のことをいいます。押印の代わりに電子印鑑、電子署名または電子サインが書類に付与されます。
しかしそれだけでは、なりすましや改ざんのリスクがあるため、契約を締結したのが本人であることを示す電子証明書を付けることで担保したり、いつ押印されたのかを記録するタイムスタンプを付けたりします。

セキュリティ機能が強化された電子契約サービスは企業において利便性が高く、導入率は年々増加傾向にあります。JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)・ITR「企業IT利活用動向調査2021」2021年1月の調査*によると、電子契約を利用する企業は67.2%にも及びました。前年7月に実施した前回調査では41.5%であり、コロナ禍を機に大幅に増加したことが分かります。

参考:https://www.jipdec.or.jp/topics/news/20210318.html

*N=981

電子契約を締結する方法

電子契約の締結方法には、電子印鑑(電子データ化されたハンコ)を押印するタイプと、電子署名または電子サインをするタイプの大きく2種類があります。

電子印鑑(ハンコ)

電子印鑑とは、契約締結書類へ電子データとして押印できる印鑑のことです。ただし、単純な画像データとしてハンコを用意するだけでは効力がありません。なりすましや改ざんが起こる可能性があるためです。

誰が押印したのかを識別する情報を組み、本人識別情報が組み込まれたタイプの電子印鑑サービスも提供されています。導入にあたってはそのようなセキュリティ対策の施されたサービスを採用しましょう。

なお、印影は目に見える形で提供されるため、スキャン・複製されるリスクはゼロではない点には注意しましょう。

電子署名/電子サイン

電子署名または電子サインを用いて電子契約を締結する方法もあります。

電子署名は改ざんを防止するための暗号技術が予め備わっており、認証局という第三者機関を通じて審査を経て発行されます。信頼性の高い電子署名を用いることで、契約を結ぶ双方の合意を立証できます。

電子サインについては、例えば携帯電話購入時の契約やスポーツジムへの入会の際に、タブレット端末で申込書にサインをする、といった場面で用いられる電子データです。本人が確かにサインしたという情報を持たせない仕組みの場合は確実な本人証明になりませんが、利用のしやすさがメリットです。

▼電子署名の認証の仕組みについて知りたい方はこちら

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契約における印鑑(ハンコ)の必要性と法的解釈

ここからは契約における印鑑(ハンコ)の必要性について、法的解釈と共にご説明いたします。紙書類による捺印が慣例となっている以上、なんとなく電子化するのは不安と思われる方もいるかと思います。結論からお伝えすると、電子契約において印鑑は必須ではありません。

紙の契約書の場合は捺印が必要

紙の契約書の場合には、印鑑を押すことが一般的です。しかし、実は印影には法的な効力はありません。民事訴訟法228条4項では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」とあります。「本人が意思を持って押印した」ことを証明することがポイントで、印影自体には効力はありません。

そうはいうものの、紙の契約書には捺印をするのが商習慣としては一般的であり、印鑑は必要と考えられます。その理由として、印影があれば「本人が意思を持って押印した」と推定できる、という最高裁判所の判例があるためです(最高裁昭和39年5月12日判決・民集18巻4号597頁)。

最高裁の「本人の印影=本人の意思による押印」という推定を前提として、前述の民事訴訟法228条4項にある「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」という二段構えで捺印の必要性を解釈することは、「二段の推定」と呼ばれています。

電子契約の場合は捺印不要

電子契約についても、考え方の構造としては紙の場合と変わりませんが、印鑑を電子化した電子印鑑それ自体には効力はなく、「電子印鑑」に加えて本人を証明する「電子証明書」が備わることにより、本人認証が成され、契約として効力があることを証明できるようになります。本人証明が何らかの形で電磁的記録として残されるのであれば問題はなく、捺印は不要と言えます。

ただし、印鑑を必要と考えるか否かについては、印鑑があることによりもたらされる「可視性」をどう捉えるかにもよります。印鑑がないと締結済の契約なのかどうか、権限者なのかどうかが判断しにくいこともあり、それを必要性と捉える考え方もあります。     

正式な印影を電子契約書に用いるリスク

このように電子契約には捺印は必須ではありませんが、締結の分かりやすさの意味で電子印鑑は利便性が高いとも言えます。しかし、社印など重要な役割を持つ印鑑の印面をスキャンして、画像ファイルとして契約書に埋め込む場合などには注意が必要です。近年スキャナの性能向上に伴い、ハンコをスキャンして3Dプリンタなどで同じものを作れるようになってきています。勝手に使用されるリスクを伴うため、電子契約でハンコを用いる場合には、セキュリティが強化されたシステムを利用することが不可欠です。

電子帳簿保存法の改正で電子契約が主流に

さらに、2022年1月に改正された電子帳簿保存法で、契約書を電子化するよう舵を切る動きが加速することが見込まれています。

電子帳簿保存法とは、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、国税関連書類などを電子データとして保存することを認めた法律です。1998年に施行されましたが、電子データとして保存できるようにするための要件が厳しく、なかなか電子化は進みませんでした。しかし、労働生産性を向上させるべく要件緩和が複数回行われ、2022年1月にまた改正されました。

1月の改正での大きな変更点の一つに、「紙出力による代替保存の廃止」が挙げられます。これは電子データとして受け取った契約書について、紙に印刷して保管することを禁止し、電子データのまま保存することを義務付け     ています。完全移行までに2年間の猶予期間は与えられましたが、かなり厳しい条件と言えるでしょう。このことからも、今後はますます電子契約への移行が進むことが想定されます。

電子契約のメリット

次に、電子契約へ移行するメリットをお伝えいたします。

業務効率化ができる

紙の契約から電子契約へ移行できるメリットは、業務効率化が図れることです。紙の契約書のやり取りにおいては、契約書の作成後に印刷を行い、関係者に回覧して承認をもらい、最終決裁がおりたら製本、押印、取引先への郵送、取引先の押印、返送、保管と、長い旅路を経て手元に戻ってきます。もちろん不備があれば差し戻しとなり最初からやり直しです。これらがオンライン上で一元管理できるようになれば、待ち時間なくスムーズにやり取りを行えるようになります。

コスト削減に繋がる

また電子契約が浸透すれば、印刷代、紙代、郵送費、収入印紙代、紙を保管しておく場所代が不要となり、大きくコストを削減することができます。一連の管理業務にかかっていた手間も省けることで人件費の抑制にも繋がります。大口の取引の多い企業は特に、収入印紙代の節約に繋がるメリットは大きいといえるでしょう。

コンプライアンス強化が図れる

さらに、セキュリティ強化・コンプライアンス強化といった意味でも、電子契約へ移行することにはメリットがあります。電子契約サービスは基本的に操作ログが残り、誰がいつ、どのような意思表示をしたのかが、電磁的に可視化されます。悪用、改ざん、不正が起こりにくい仕組みのため、利用する側としては安心感が高まるでしょう。

電子契約のデメリット

一方のデメリットとしては、現在の契約書に関連する社内の既存業務フローを変更しなければならないこと、取引先へ説明の必要があること、またサイバー攻撃のリスクがゼロではないことが挙げられます。
新しいシステムを導入する際は、どうしても運用負荷がかかってしまうもので、社内の反対があるかもしれません。また電子契約の締結は契約の相手先の了承がなければ利用することができません。セキュリティ対策が不十分な仕組みでは攻撃されるリスクがあります。

前述の電子帳簿保存法においても、契約書を電子データとして取り扱う条件として、タイムスタンプの付与や、データ修正と削除の履歴が残ることを定めています。そのため電子契約システムの導入にあたっては、セキュリティ対策が整っていて電子帳簿保存法に対応していることを前提として、導入・操作が簡単に行えるようなシステムを選択することが望ましいといえます。

▼電子契約のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方はこちら

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電子契約は「Shachihata Cloud」にお任せ

業務を効率化させようという機運が、日本国内で高まりを見せています。社外との文書のやり取りにあたっては、権限者双方が意思を持って締結した内容であるかどうか、また改ざんが成されていないかどうかを証明するセキュリティ対策が必須となります。

シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」は、そのようなセキュリティに配慮したクラウド型の電子契約サービスです。文書の社内回覧から取引先への送付、その後のやり取りまですべて本サービス内で完結させることができます。最近リリースされた新エディションでは、オプションとして電子署名にタイムスタンプの機能も付けられるようになり、本人認証の精度がさらにアップしました。この機会にぜひ導入をご検討ください。

▶︎Shachihata Cloudの詳細はこちら

WRITER
石井 慶
シヤチハタ株式会社 システム開発部 開発4課課長
1994年入社。入社5年後電子印鑑を共同開発したアスキー・ネットワーク・テクノロジー社に出向し何も知らなかったITの基礎を学ぶ。現部署に異動後、業務改革を実行する企業に寄り添う毎日を送っている。
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