取り扱っている品目に軽減税率の8%はなく、10%の標準税率だけの場合でも、インボイス登録は必要です。ただし、適格請求書(=インボイス)においては、記載する品目の税率が10%のみであれば税率ごとの合計額を記載する必要はありません。
インボイス制度開始時に適格請求書発行事業者であるには、2023年3月31日までにインボイス登録の申請が必要です。特に免税事業者はインボイス登録すると課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。インボイス制度をよく理解して、登録するか早めに検討しておきましょう。
さっそく、インボイス制度と適格請求書の関係について解説いたします。
インボイス制度とは、売り手が適格請求書(=インボイス)を発行することで、買い手へ商品に適用された正しい税率を伝え、消費税を計算するための仕組みです。
軽減税率によって消費税が8%と10%の2つになり、消費税の計算が複雑化したため、消費税の納税や経理仕訳において誤処理が発生する可能性が出てきました。つまり、消費税の誤処理などのトラブルを防ぐために、商品に適用されている消費税率を明確にし、売り手から買い手へ正しい消費税率や消費税額を知らせる必要があるのです。
またインボイス制度では、仕入税額控除を受ける要件として、売り手が発行する適格請求書の保存が義務付けられています。仕入税額控除とは、売上にかかった消費税を納税する際に、仕入れにかかった消費税を控除できる制度です。
なお、適格請求書を発行できる事業者は、適格請求書発行事業者に登録した事業者のみであるため、発行するためには登録手続きを行う必要があります。
適格請求書(=インボイス)とは、2023年10月1日から施行されるインボイス制度で新たに導入される請求書様式です。
消費税が標準税率(10%)と軽減税率(8%)の2つ混在するため、売り手から買い手へ正しい税率や消費税を知らせるために適格請求書を利用します。そのため、適格請求書の品目は内税か外税かを統一し、適用税率と税率ごとの消費税の合計を記載する必要があります。
ただし、適格請求書に記載する品目が標準税率のみで軽減税率なしの場合は、軽減税率対象の合計額の記載は不要です。適格請求書に標準税率の対象がなく軽減税率だけであれば、すべて軽減税率であることを請求書内に記載しなければいけません。
なお、適格請求書を発行するには、適格請求書発行事業者への登録が必要です。登録できるのは課税事業者のみのため、課税売上高が1,000万円以下の免税事業者が登録する場合は、課税事業者となり消費税を納税しなければいけません。
取引先によっては、適格請求書とそれ以外の請求書様式が混ざると経理上管理が複雑となることから、適格請求書しか受け付けない場合もあるため、事前に取引先の意向を確認しておきましょう。
2023年10月1日から適格請求書を発行するには、2023年3月31日までに適格請求書発行事業者に登録申請する必要があります。
適格請求書として扱う書類は請求書だけでなく、以下の必須事項が記載された請求書や納品書、領収書等でも適格請求書といいます。
①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに合計した対価の額(税抜および税込み)および適用税率
⑤税率ごとに合計した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
適格請求書に記載された品目の税率が10%のみであれば、税率ごとに分類する④⑤の記載は不要です。
また、ひとつの書類だけで適格請求書の必須項目を満たす必要はなく、相互関係が分かる複数の書類で必須事項を記載すれば問題ありません。例えば、請求書と納品書の相互関係が分かるように請求書に納品書番号を記載し、請求書と納品書で必須項目を満たしていればいいということです。
なお、必須項目が記載されていないものは適格請求書として扱えず、仕入税額控除には使えないため気を付けてください。
ただし、本来仕入税額控除が受けられない、免税事業者や適格請求書発行事業者以外からの仕入れについては、次の表のとおり経過措置が定められています。
期間 | 割合 |
2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
2026年10月1日〜2029年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
経過措置として、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れであっても、2029年9月30日までは一定の仕入税額相当額を控除できます。
従来、次の2種類の請求書が利用されています。2023年10月1日以降は、インボイス制度開始に伴い適格請求書が追加されます。
請求書の様式について順に解説いたします。
2019年9月30日まで利用されていた従来の請求書は、税率ごとの合計金額や消費税額が記載されておらず、すべての税率の合計だけが記載されている請求書です。
従来の請求書では、次の記載事項が定められていました。
①請求書を発行した者の氏名または名称
②取引年月日
③取引内容
④取引額の合計(税込)
⑤請求書を受領する者の氏名または名称
従来の請求書様式を利用されている方は、インボイス制度に対応できるように税率ごとの消費税額を正確に把握できる区分記載請求書に変更しましょう。
軽減税率(8%)が導入された2019年10月1日以降、仕入税額控除を受けるためには区分記載請求書が必要です。
区分記載請求書とは、従来の請求書の記載事項を維持しつつ、記載事項の内容を加えた請求書をいいます。
①請求書を発行した者の氏名または名称
②取引年月日
③取引内容(軽減税率対象の商品が分かるように)
④税率ごとに合計した取引額の合計(税込)
⑤請求書を受領する者の氏名または名称
区分記載請求書では④⑤の記載事項の内容が変更され、軽減税率の対象品目であるか、消費税率8%と10%の合計額を記載するなど軽減税率に対応した様式になっています。
インボイス制度は2023年10月1日から始まるため、2022年9月30日までの期間に仕入税額控除を受ける場合は区分記載請求書を受領し、保存しなければなりません。
インボイス制度では適格請求書(=インボイス)が必要になるため、区分記載請求書に以下の3つの項目を記載する必要があります。
①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
②税率ごとに合計した取引額の合計(税抜または税込)および適用税率
③消費税率ごとに合計した消費税額
なお、適格請求書は、適格請求書発行事業者に登録した事業者のみ発行できます。こちらの記事では、適格請求書を発行したい事業者の方向けに、適格請求書発行事業者の申請方法を詳しく解説しております。
適格請求書を発行する際の注意点を2つ解説いたします。
順に解説いたします。
適格請求書を発行できるのは、課税事業者で適格請求書発行事業者の登録が完了している事業者です。
事業者登録を受けるかは任意ですが、インボイス制度開始時に適格請求書発行事業者になるためには2023年3月31日までに登録申請しなければいけません。さらに、取引先との調整やシステム構築、社内教育などの実施が必要になる可能性があるため早めに準備しておきましょう。
特にインボイス制度において仕入税額控除を受けるには、適格請求書発行事業者が発行する適格請求書を受領し、保存しなければいけません。
取引先が仕入税額控除を受けている場合、適格請求書発行事業者以外と契約しない可能性も考えられます。そのため、取引先にインボイス制度の対応方法を確認しておきましょう。
なお、適格請求書発行事業者に登録できるのは課税事業者のみです。現在免税事業者の方が事業者登録した場合、登録日以降の取引で発生した消費税は納税しなければいけません。
インボイス制度の導入により事業者が受ける影響について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しておりますのでご覧ください。
適格請求書に記載する商品金額は税込表示と税抜表示を混在させずに、どちらかに統一し税率ごとの消費税額を記載しなければいけません。
そもそもインボイス制度は、売り手から買い手へ正確な適用税率と消費税額を知らせることが目的です。適格請求書発行事業者であっても、適格請求書に記載すべき事項を満たしていなければ適格請求書に扱われないため注意してください。
なお、適格請求書に記載する品目の税率が10%と8%だった場合は、税率ごとに合計額を記載しなければいけませんが、10%のみであれば税率ごとの合計額を記載する必要はありません。適用税率が8%のみの場合も同様に合計額の記載は不要です。
適格請求書発行事業者は、取引先から適格請求書(=インボイス)を求められたら適格請求書の発行と保存が義務付けられています。適格請求書には内税と外税を混在させず、片方の表示方法に統一し合計額や消費税額を記載するなど、6つの記載事項が定められています。
「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」であれば、適格請求書の雛形を作成しておくだけで、一括で適格請求書を作成し、ワークフローで一括承認を依頼することが可能です。適格請求書に記載すべき6つの事項が不足すると適格請求書として認められない可能性もありますが、制度に沿った雛形を作成しておくだけで誰でも簡単に適格請求書を発行できます。
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